転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


44 綺麗な鳥とふらふらする頭 




 しばらくお話をしたらお父さんの機嫌が直ったみたいだから狩りを再開。
 早速僕は新しくなった索敵魔法を使ってみた。
 そしたら結構な数の獲物が、この近く居る事が解ったんだ。

「おとうさん、やっぱりジャイアントラッドがいい? ほかにもとりとかウサギもいるみたいだけど」

「えっ、何故そんな事が解るんだ、ルディーン? もしかしてそれも魔法なのか?」

「う〜ん、まほうといえばまほうだけど、ちょっとちがうきもするし……」

 僕の索敵魔法って、魔法って言ってるけど正確には複合スキルなんだよなぁ。
 でも、魔力を使って索敵しているんだから魔法と言えないことはないし、実際魔法が使えない人にはできない方法だから魔法と言いきってもいい気もするし。

「よく解らんが、とにかく魔法的な方法で解るって事か。それで、その方法では何がどこにいるかまで解るのか?」

「このスキルでさがしたことがないと、なにかまではわかんないよ。でもおおきさでジャイアントラッドぽいなぁってのはわかるし、ウサギとかいろんなとりは、いつもとってるから、だいたいわかるんだ」

 実際、今僕の索敵範囲にいる獲物の内、解らないのは5〜6体で集団行動してるのとか結構早く空を飛んでるのとかくらいかな? あと、虫みたいに小さいのは魔力の反射が小さすぎて帰ってこないからそもそも探せないし、何がいるかなんてのも当然解んない。

 それと僕が使ってる索敵魔法は反射して帰って来た魔力を感知する事によって場所を知るものだから、ドラゴン&マジック・オンラインの時のように自分の魔力を隠蔽できる魔法使いや魔族、それに隠密系の能力を持った一部の魔物はこの方法では探せないんだよなぁ。
 だからもしそんなとっても強い魔物がいたとしても、僕は襲われるまで気が付く事はできないと思う。
 まぁそんなのはこんな所にいないだろうから、別に気にする事でも無いけどね。


 とにかく魔法で探せるって事は解って貰えたみたいだから、今近くにどんなのがいるのかを教えてあげた。
 するとお父さんは、僕が予想してなかった答えを返してきたんだ。

「その空を早く移動してるって奴、木に止まっているのはいないのか?」

「え? いるよ。ぜんぶがとんでるわけじゃないもん」

「よし、ならそれを狩りにいこう」

 なんと正体不明のを狩りにいくって言い出したんだよね。
 あっでもそう言い出したって事はお父さん、もしかしてこの飛んでる奴の事を知ってるのかな?

「ねぇおとうさん、そのおそらをはやくとんでるの、もしかしてなにかしってる?」

「実際に見てみないと確信は持てないけど、想像しているものと同じなら解るぞ」

 やっぱりか。
 お父さんが言うにはその空を飛ぶ魔物はブレードスワローと言う鳥の魔物じゃないかって思ってるんだって。
 この魔物は物凄く早いから飛んでいる時に矢を当てるなんて事はまず無理な上に、音にもかなり敏感だから離れた場所から弓を撃っても弦をはじく音や矢の風きり音を聞いて避けてしまうんだってさ。

「だから気づかれないよう、かなり近くまで行ってから弓を射らないと狩る事ができないんだ。それだけに凄腕の狩人でもなければ狩れないから、幻の鳥とまで言われてるんだぞ」

 ブレードスワローは空を舞うその姿がまるで光り輝く銀色の刃が空を飛んでいるかのように美しいからその名がついたらしいんだけど、その羽根は死んだ後も光沢を失わないから貴族様のマントや帽子の飾りとしてもかなり人気があるんだって。
 それなのに殆ど獲れないから、それ程強くない魔物なのにかなりの高値で取引されるんだってさ。

「それにブレードスワローは肉もうまいんだぞ。そっちは羽と違ってそれほど高くは売れないけど、それでも野鳩とか鴨なんかよりずっとうまいんだ。村に持って帰ったらシーラもきっと喜ぶぞ」

「そうなんだ。ならがんばって、とらないとね!」



 そこから始まったのはまさに乱獲と言っていいんじゃないかなぁ? だって僕のマジックミサイルは発射時に弦をはじく音なんてしないから小さな声が届かないくらい離れた場所から撃っても問題ないし、飛んでいく最中も弓矢のように風きり音がしないから気づかれることも無い。
 だから面白いようにブレードスワローが獲れるんだよね。

 そりゃあ何度かは魔法が届く範囲まで近づく前に飛び立たれてしまう事もあったけど、それでも僕たちは1時間ほどの間に6羽ものブレードスワローを狩る事が出来たんだ。
 これは草原で普通に鳥を獲ってる時より速いペースだし、森の中を移動しながら狩りをしている事も考えると、とっても凄いことなんだ。

「流石にそろそろ持つのが大変になってきたから、もうこの辺りでやめるか」

「そうだね。いくらとりだっていっても、けっこうおおきいもんね、ブレードスワロー」

 一羽の大きさは大き目の鷹くらいあるから、ジャイアントラッドに比べたら軽いとは言え、この数になるととにかく嵩張る。
 だから僕たちはこれくらいでブレードスワロー狩りをやめる事にしたんだ。

「もう日も傾いてきているし、天幕まで戻ったら流石にもう戻ってくるのは無理か。今日はここまでかな」

「まって、ちかくに」

 完全に帰るつもりになっているお父さんだったけど、僕は探知魔法で近くに大きなものがいる事に気が付いたんだ。
 探知魔法を使い始めてから一度も遭遇してないから絶対とはいえないけど、多分これは。

「おとうさん、たぶんジャイアントラッドだとおもう、おおきなまものがちかくにいるんだ。ぼく、まだこのまほうをつかってからいちどもジャイアントラッドをみてないから、まりょくをおぼえるために、みにいっていい?」

「おう、いいぞ。と言うより、近くにいるならついでにお前の魔法で狩ってしまおう。ブレードスワローは嵩張るから持ちにくいだけで、重さ自体はまだ余裕があるからな」

 お父さんの了解を得たから、僕たちは大きな魔物の反応がある場所へと足音を殺しながら向かったんだ。
 すると前方に見えてきたのは今日3度目のご対面となる巨大な影。

「やっぱりジャイアントラッドだったね」

「ああ。ルディーン、ここから狙えるか?」

「うん、だいじょうぶ、じゃあまほう、うつね」

 いつものように体に魔力を循環させて、前方のジャイアントラッドの頭に向かって魔法を発射! 飛んでいった魔法の杭は吸い込まれるかのようにジャイアントラッドの側頭部に当たって、

 ピギィ!

 一撃でしとめる事に成功したんだ。
 それを見た僕は喜んで飛び上が……ろうとしたんだけど、急に頭がふらっとして、

 コテン。

 そのまま転がっちゃったんだ。

「えへへっ、ころんじゃった」

 何もないところで転んだのが恥ずかしかったから、僕は照れ笑いを浮かべて立ち上がろうとしたんだけど、なんでだろう? ふわふわしてうまく起き上がれない。
 それでもなんとか立ち上がる事はできたんだけど、ふわふわと雲の上を歩いているような感覚はそのままで、なんか変なんだ。

「お父さん、ぼく、なんかへんになっちゃった。なんかふわふわする」

「ん? ああそうか。しまったな、ちょっと調子に乗りすぎたようだ」

 僕は何故いきなりこんな事になったのか解んなくてちょっと不安になってたんだけど、お父さんが苦笑いしながら頭をかいている所を見てちょっと安心したんだ。
 こんな顔をしているって事はお父さんは今、僕に何が起こっているのか解ってるって事だもん。
 と言う訳で、今の僕の状態が何故起こったのか聞いてみたら、

「それはたぶん、森に入り始めた子供がよくなる症状と同じものだ。狩りを始めたばかりの頃によく出る症状でな、一日もすれば体も慣れてすっかり良くなるから心配するな」

 って答えが帰って来た。
 理由はよく解っていないらしいんだけど、殆どの子供が一度は経験するものらしいからお父さんも別に慌てなかったんだってさ。
 でも僕はその答えを聞いて一つ、思い当たる事があったんだ。
 だから早速自分のステータスを開いて、その疑問の答え合わせをする。

 やっぱりか。

 賢者のレベルが3に上がっていた。

 レベルが1から2に上がった時はこんな症状はでなかった所を見ると、たぶん短期間で大量の経験値? を集めると、頭が体の強さに順応する為の準備を整える前にレベルが上がってしまって、そのせいでこんな状態になるんじゃないかな?
 で一日くらい経つと、やっと体の強さに頭が付いて行くようになるんだと思うんだ。

「そっか、ならだいじょうぶだね」



 この後、ジャイアントラッドの血抜きを済ませている間に症状も少しましになったから僕たちは森を出て商業ギルドの天幕まで戻り、、そこでお金を払って荷物を運ぶ為の馬車に乗せてもらって今日の収穫物と共に意気揚々とイーノックカウへと帰っていったんだ。
 ところが。

「カールフェルトさん、何をやっているんですか! こんな小さな子を連れて森の中を歩き回るだけでも本来なら止めるべきだと思う様な事なのに、こんなに多くの魔物を狩ってくるなんて!」

「あっ、いや、この獲物の殆どはルディーンが……」

「言い訳なんて聞きません! 大体ルディーン君の状態を見なさい、こんなフラフラになって。本当に可哀想に」

 冒険者ギルドに着くと、裏の買取場所に何か用事があったのか偶然来ていたルルモアさんに見つかっちゃったんだよね。
 で、大量の獲物とちょっとふらついている僕を見た彼女が、お父さんをしかりつけたってわけ。

「ルディーン君は魔法を覚えた経緯を見ても解る通り、放って置けば無理をするに決まってるんですから、それを止めるのが親の役目でしょう! それなのに!」

「ルルモアさん、お父さんはわるくないよ。ぼくがいっぱいやっつけたから」

「ルディーン君。大丈夫、君は何も悪くないのよ。そういう判断は親がするものなんですからね」

 僕もなんとか取り成そうとしたんだけど、ルルモアさんは笑顔を向けてそう言ってくるだけで、すぐにお父さんのほうに向き直って説教を再開してしまうんだよね。

「流石にこれは看破できません。奥さんに報告の手紙をギルドから出させていただきます」

「いや、それは……」

 結局いくらお父さんが謝ってもルルモアさんは許してくれず、その日の内にその手紙は出されてしまったんだってさ。


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